「小さなお茶会」が生まれた幸運は、猫十字社という一人の優れた才能が、1978年から1987年という時代に活動したという事実からも述べることができます。象徴的な出来事として、今では当たり前になっているコンビニの終夜営業を顧みます。セブンイレブンが第一号店を開店したのが1974年でした。そしてその後この店舗形態はあっという間に全国に広まり、1987年には、国内で3000店舗に到達しました。闇に閉ざされていた夜の街が、全国至る所で光にさらされ始めたのです。闇は光に侵食され、今までの価値観が大きく転換しました。様々な権威が崩れ、差別や闇の社会が明るみに出て糾弾され、女性の地位は向上し始めましたが、他方で家族という単位が崩壊をはじめ、様々な矛盾に直面するようになりました。非常に強力な破壊と創造の力がこの時代に噴出しました。そしてやがて、このエネルギーはバブル経済を招来し、狂気を生みます。『小さなお茶会』はこのようなエネルギーの磁場に誕生しました。この珠玉のメルヘンがたたえる豊かな世界は、このとめどもないエネルギーとは無関係ではありません。しかし、すべてが光にさらされる、という事態は、一人一人の人間を孤独に追い込むことをも意味します。この孤独は、現在に至るまで、より深く、より強く人々の心をとらえています。『小さなお茶会』はこの孤独な魂にかけがえのない癒しを提供し続けています。
ジャンル | SF/エッセイ/ファンタジー |
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雑誌 | |
出版社 | 大洋図書 |
レーベル | クイーンズセレクション |
ページ数 | 全169ページ |
配信日 | 2019年07月01日 |