ある町のはずれに、いつの頃からか鍛冶屋があった。その男はいつも熱心に包丁造りなどに精を出していたが…どことなく暗く、近所の付き合いも一切なかった。ある日のこと。その鍛冶屋に武士が一人訪ねてきた。名を鬼倒流・萩原一角、兵法修行中であるという。その萩原は鍛冶屋に言った。一手お立ち会いくだされ! と。もちろん鍛冶屋の男は驚き戸惑い、わたしがどうしてお武家様と切り合いが出来ましょうか、からかわないでくださいと答えたが、萩原は意外なことを話し出し…。(孤剣果てずより)
ある町のはずれに、いつの頃からか鍛冶屋があった。その男はいつも熱心に包丁造りなどに精を出していたが…どことなく暗く、近所の付き合いも一切なかった。ある日のこと。その鍛冶屋に武士が一人訪ねてきた。名を鬼倒流・萩原一角、兵法修行中であるという。その萩原は鍛冶屋に言った。一手お立ち会いくだされ! と。もちろん鍛冶屋の男は驚き戸惑い、わたしがどうしてお武家様と切り合いが出来ましょうか、からかわないでくださいと答えたが、萩原は意外なことを話し出し…。(孤剣果てずより)
徳川家も五代目(綱吉)を重ねた元禄の頃は、天下はすこぶる泰平、日毎穏やかな明け暮れが続く平和な時代であった。しかし風…
明治以前…三州田原城の城南丘陵の一隅に奇妙な石があった。何気なく見ていればなんの変哲もない細長い石としか見えないのだ…
もと土佐藩の有力郷士であった品川多聞を頭目として薩摩・長州・土佐・各藩の藩士、浪人合わせて百名以上の尊皇攘夷派の者が…
明治元年八月二十三日、会津藩士白虎隊・朱雀隊・青竜隊・玄武隊および旧幕兵全員は怒涛のごとき征討軍を迎え撃ってせいふう…
佐野田角造。不動産業兼金融業――戦中戦後の動乱期にどん底から這い上がって巨万の富を築いた人物である――この男、兎に角…
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尼子経久の居城、富田城……城主・経久直々に呼び出された本庄助次郎は大急ぎで馳せ参じた。突然の呼び出し、要件は何かと問…
牢内で一人の罪人が死を待っていた。男は時折空を見つめて野獣のような低いうめきを漏らすのみ…その陰惨さにはさすがの灯な…
芸者玉千代が首の骨を折られて殺されたのは一年前! やっと下手人の確証をつかんだのはひと月前…奉行所のにらんでいたとお…